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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
公演の前日、劇団員四十名ほどが、若松に来た。それぞれ、三ヶ所に、分宿した。
俳優十人ばかりを、玉井組の大伝馬船に乗せて、勝則は、洞海湾内を案内した。
半纏姿の勝則は、櫓をこぎながら、
「あれが、問題の三菱炭積機です」
いちいち、現地について、争議の経過を、ひととおり、説明、報告した。
「やっぱり、日本一の石炭港だけあるわね」
女優の一人が、断髪を潮風になぶらせながら、感歎するように呟いた。
戸畑側の新川岸壁に、貝島炭積機とならんで、三菱炭積機工事が、着々と進んでいる。それは、巨大な鋼鉄の昆虫に似ていた。海上には、三井の「ローダー」、三菱の「ポンツウン」などの沖積機械が浮かんでいる。それらの上を、多くのカモメが白く羽ばたきながら、悠々と飛びかい、或るものは、獲物を見つけて、さッと、海面に向かって、急降下して行った。
船に乗っていたのは、佐々木孝丸、滝沢修、松本克平、嵯峨善兵、島公靖、その他の人々だった。
公演準備事務所として、裏仲町にある「玉田美粧院」の二階八畳が借りてあった。昔は「女髪結い処」という看板がかかり、お京や染奴の髪を結ったことのあるおナツの店であったが、今はパーマネントもやる近代的な美粧院になっていた。