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はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页

青空文庫

前から、さかんに、ストライキを力説していたので、すこぶる満足らしい。

「さあ、何日でも、何十日でも、頑張るばい」

米俵の山を見あげて、にこにこ顔である。

ならべられた五升釜に、ぐらぐらと、米が煮える。それを眺めながら、マンは、

(昔、これとよう似たことがあったが、……)

ふと、遠い思い出に、ひたることがあった。

(そうじゃ。江崎満吉が、なぐりこんで来るという晩じゃった)

金五郎から、手出しするな、といわれて、台所で、大釜に、糊をたぎらせていたのである。暴漢どもが闖入して来たら、柄杓で、それを打っかけてやるつもりだった。

(あれから、もう、三十年近くがすぎた)

胸にしみる歳月の流れである。

金五郎の顔を見ると、

「兵粮の心配はしなさんな。あたしが居りゃあ、大丈夫。しっかり、交渉の方を進めて下さい」

夫の肩をたたくようにして、激励した。

「面白がっちょるのう」

金五郎は、仏頂面で、そういう。マンは、ストに入っても、憂鬱そうにしている金五郎の様子が、腑に落ちない。

(どうしたとか知らん?)

首をひねってみたが、わからなかった。

港内の全作業が停止した、という破天荒の椿事によって、争議は、急転直下、解決した。