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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
と、横から、マンがいった。
「金さん、あれは?」
「なんな?」
「ピストル」
「ありゃあ、捨てた」
「捨てた?」
「お前はいらんちゅうし、おれも、持っとっても、碌なこたないけ、思いきって、海の中に投げこんでしもうたよ」
「ほんとですよ」と、また、マンがいった。
新之助は腕組みして、唇を噛んだ。そのひきしまった浅黒い顔には、苦渋のいろが、漲っている。
島崎勇次も、意外の面持で、露骨に、仏頂面になった。
庭には、音もなく、牡丹雪が降り積む。飛石も、瓢箪池も、燈籠も、区別がつきかねるほど、なにもかも、深々と、白かった。松の枝にのっている雪が美しい。
「金さん」
「あン?」
「お前は、のんきそうにしとるけんど、他人事じゃないとばい。友田一派は、勇さんをかたづける序に、どさくさにまぎれて、今度こそは、お前の息の根をとめることを定めとるらしいど。油断しちょると、大きな大事になるばい」
二人は、不機嫌な様子で、帰って行った。
日若座のこけら落し、「北九州素人浄瑠璃大会」の日も、朝から、雪が降りつづけた。
新築された劇場は、多くの美しい花輪で、飾られた。そのなかには、「日若座さんへ・吉田磯吉」