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はなとりゅう
花と龍
火野 葦平
花と龍「読売新聞」読売新聞社、1952(昭和27)年6月20日~1953(昭和28)年5月11日<br>あとがき「花と龍(下巻)」新潮社、1953(昭和28)年7月31日<br>解説「火野葦平選集 第五巻」東京創元社、1958(昭和33)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 410,131 字 · 824 页
金五郎の眼からも、マンの眼からも、噴出するように、水がほとばしり出た。
にぎやかで打ちとけた饗宴がはじまった。
福岡県会議員に出て、県会議長となっている井上安五郎も出席した。次には代議士におし出そうということになっている。原田雲井が「高砂」を謡った。
三十年前、はじめて、「玉井組」の看板をかかげたとき、金五郎の家の二階に下宿して、ゴロゴロしていた八人の子分は、みんな健在である。そして、すこしずつ、えらくなっている。
――玉井組の大助役になっている松本重雄、小炭坑主の大川時次郎、割烹「六ゾロ」の松川源十、八幡製鉄作業主任の谷俊次、山九組小頭の城三次、聯合組甲板番の新谷勝太郎、船具商の岡野清七、豆腐屋の山本甚七。
――支那大陸。
――ブラジルの天地。
金五郎とマンとの壮大な青春の夢は、「猛獣のうようよしているジャングル」として、敬遠していた若松の小世界に、埋もれてしまったけれども、今は、もはや、それにも悔いはなかった。
同じ夢を抱いた森新之助も、「飛鳥」と「日若座」との経営者として、おさまっている。
祝宴から一週間後、二月二十六日、東京において、軍隊の叛乱事件が起った。