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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
インカの王子は幼時より「賢者」の手によって神事と軍事とを仕込まれるのであるが、特に軍事はインカ貴族の子弟らと共に軍事学校に於て教育された。十六歳になると、成年式の準備としての公の試験をうける。試験官はインカ中の最も有名な長老たちである。その前で受験生たちはあらゆる種類の武芸を演じ、断食を行い、戦闘演習をやる。これが三十日位続くのであるが、その間王子も同じように土の上で寝、裸足で歩き、粗衣をまとって苦労する。それが終ると及第者たちは王の前へ出て成年式に与るのである。王はこの若者たちの及第を祝し、王族としての責任を説いて聞かせる。日の神の子らよ、我々の偉大なる祖先が人類に対して行ったあの栄ある慈悲の業をまねよ、という。そうして一人一人に黄金の耳飾りを着けてやる。そのあとにインカの地位を示す履とか、成年を示す帯とか、花の冠とかが続く。インカ貴族たちが集まって王子に祝をのべる。全集団は広場に出て祝賀の祭を行う。これらのことを見聞したスペイン人は、中世のキリスト教騎士の成年式との酷似に驚いたと云われている。
以上の如くインカ貴族の子弟と同じ様にして成年に達した王子は、今や父王の政治や軍事に与る資格があると認められる。