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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
既に前に、インカは小人数の白人を自分の掌中へ誘き寄せようとしているのだ、という土人の陳述をきいて、不安のあまり通弁の一人を偵察旁々使者に派遣したピサロにとっては、この山路への突入は、かなり思い切った決意を必要とするものであった。が踏み込んで見るとインカは何の防禦もしていなかった。数日の緊張した行軍の後にコルディレラの頂まで達したとき、インカの使者がラマの贈物を持って現われインカの歓迎の辞を伝えた。二日の後下り坂にかかった時、再び使者が贈物を持って現われた。そこへピサロの派遣した使者も帰って来て、インカの敵意を報告した。インカの使者は一々それを反駁したが、ピサロの心中にはアタワルパの奸策を確信するものがあったらしい。しかし彼はそれを色に現わさず、インカの使者を心から信ずるが如く装った。
遂に七日目にピサロの軍隊はカハマルカの谷を見おろす所まで来た。それは五里に三里の美しい平地で、丹念に耕されてあった。住民も海岸地方よりは優秀であるらしい。白い家々が日光に輝いているカハマルカの町の一里ほど向うに、今インカの滞在している温泉場があって、そこの丘陵の斜面沿いに数知れぬ白い幕舎が数哩に亘って並んでいた。