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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

なものとして感じた理由になっていると思われる。

われわれはその土壌に眼をつけて、十六世紀の日本のキリシタンの運動が日本人自身の体験に属することを理解しなくてはならぬ。それによって禁教や鎖国の事実がいかに深くわれわれの運命に関与しているかも十分に会得されるに至るであろう。

シャビエルに日本伝道の意図を起させたのは鹿児島人ヤジロー(或はアンジロー)である。彼はマラッカでシャビエルに逢ったのであるが、どうにかポルトガル語で話し合うことも出来、彼の側からシャビエルに傾倒するとともに、シャビエルもまた彼から非常によい印象を受けた。そこでシャビエルはこの一人の日本人を通じて日本民族に対する強い信頼と希望とを抱くに至った。その意味でヤジローは十六世紀の日本人の代表者、日本民族の尖端の役目をつとめたのである。しかし日本の歴史はこの重大な役目をつとめたヤジローについて何一つ記録していない。われわれはこの興味深い遭遇の話をただシャビエルの書簡(一五四八年一月二十日附コチン発)やヤジローの書簡(一五四八年十一月二十九日附ローマ・ヤソ会宛)などによって知るのみである。ところでそういう遭遇の起り得た背景としては、当時の東アジア海上における活溌な交通、貿易商人の頻繁な往来があげられなくてはならぬ。