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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

仏僧たちが彼を款待したことは、彼自身「ニンジツは驚くほど自分に親しんだ」と云っているのによっても明かである。彼は、ポルトガルから六千里も距っているこの遠い日本へ、ただイエス・キリストの福音を説くためにのみやって来た、とその使命を語り、また霊魂の不滅の問題などをも論じて見たらしい。しかしニンジツたちは、この遠来の客の珍らしい話に驚くのみで、宗論にはあまり深入りしなかったらしい。だからここではまだ宗教としての衝突は起っていないのである。しかしシャビエルの方では、この接近によって、「坊主」たちが俗人よりもひどい罪悪に陥っていることを見出した。道理に従うという点でも、彼らは俗人ほど素直でないと解った。そこで先ずシャビエルに起った問題は、これほど堕落している「坊主」たちが、何故に彼らよりも善良な俗人たちから大きい尊敬を得ているか、ということであった。その答として彼の頭に浮んだのは、仏僧の禁欲生活であった。物資の乏しい日本では一般に甚だしい粗食が行われているが、特に僧侶は、肉類も魚類も食せず、酒も飲まず、野菜と果物と米との食事を日に一回取るだけである。そのほか女との交わりも厳格に禁ぜられている。