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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

平戸の町では公然たる説教は禁ぜられていたが、信者のあることは右の村々と同様であった。二三年後にルイス・ダルメイダが出張して来たときには、度島は「天使の島」のようであったし、生月島も住民の三分の一は信者となり、六百人を容れる会堂を持っていた。ダルメイダは最大級の感激の言葉を以てこれらの信者の状況を報道している。この地方は倭寇の活動以来海外交通の尖端に立っていたのであるから、そういう現象が起るのも不思議はないのである。

がそういう民衆の気分と、武力によって決せられる当時の政情とは、全然別のものであった。新興の毛利氏の武力は、丁度この頃に北九州を不安と動揺に陥れた。ビレラが平戸を追われて間もなく、ガゴもまた博多を逃げ出さざるを得なかったのである。

ガゴが大友義鎮から博多の地所を実際に受取ることが出来たのは、一五五八年の復活祭の後であった。彼はフェルナンデスと共に博多に赴いて宣教師館と会堂とを建築し、布教活動をはじめた。博多には山口から来ている信者もあったが、中でも山口から移住して来たアンドレーという武士は、非常に熱心で、遂にエルサレムのエステバンのように殉教するに至った。