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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
説教のうまいパウロはもう前の年からダルメイダを助けてここで働いていた。信者の側でも、平戸諸島はいうに及ばず、遠く博多や豊後からさえ集まって来た。そうして熱心な説教や告解や鞭打苦行が続いていた。
その間に事件は外から起って来たのである。まず第一は、四旬節の初めに、島原の領主から宣教師の派遣を求める使者が来たことであった。これが島原半島への布教の端緒である。前の年にトルレスはダルメイダをして有馬の領主有馬義直(義貞)を訪問せしめた。この領主は横瀬浦を領している大村純忠の実家の兄で、純忠もその下に附いていたし、また教を聴こうとする意志のあることも聞えて来たからである。その時有馬侯は戦陣にあったので、ダルメイダはただ逢っただけであったが、その家臣の一人で、また姻戚でもある島原の領主が、領地に帰ってから宣教師の派遣を求めるであろうと云った。ダルメイダはそれをただ挨拶の言葉として聞いたのであったが、それが本当になって来たのである。トルレスは、直ぐには出せないが、七八日中には派遣しようと答えた。そうして四旬節の中頃に、ダルメイダと日本人ベルシヨールとを、復活祭までの予定で島原に派遣した。