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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
フロイスたちもそれには驚嘆せざるを得なかったのである。
その翌日は東山見物で、祇園から知恩院に廻り、そこで日本の説教師の説教の模様を視察した。その説教師は高貴な生れの四十五歳位の人で、容貌が非常に美しく、声の質や、優雅な態度・動作など、確かに注目すべきものであった。その説教の技倆も嘆賞に値した。これを見てビレラもフロイスも、日本の信者に対する説教の方法を改善しようと考えたほどである。
こういう印象を記したあとでフロイスは力説する。シャビエルが云ったように、日本人は、文化や風俗習慣に関しては、多くの点において、スペイン人よりも遙かに勝っている。日本に来るポルトガル人があまり日本を尊重しないのは、九州の僻地の商人や民衆にのみ接しているからである。そういう民衆と都の人々とは実に甚だしく異なる。シャビエルが日本に眼をつけたのは確かに聖霊のうながしによるのである、と。
そう云う考のフロイスであるから、日本人が洗礼を受ける前にさまざまの難問を提出する所以をも理解することが出来た。ヨーロッパ人は物の道理などを考える前にすでにキリスト教徒となっているのであるが、日本人は異教のなかで育って来た後にキリスト教の真なることを認めて改宗するものであるから、予め教義についての理解に徹しなくては、洗礼を受けることが出来ない。