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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

そこから、杉並木の壮麗なのに感嘆しながら春日神社に行き、手向山八幡宮を通って大仏殿へ出たのであるが、これも寿永修築の大仏殿で、今のとは形も大きさも違うものである。ダルメイダは日本の建築が一目して寸法の解るものであることを説いたあとで、大仏殿を間口四十ブラサ(約二九〇尺)、奥行三十ブラサ(約二一八尺)と記している。しかしこの堂は天平尺で間口二九〇尺奥行一七〇尺であったのであるから、間口の方はかなり精確であるが、奥行の方が合わない。恐らく十一間七面の柱間を各四ブラサと見つもり、正面の柱間を十としたのに対し、側面の柱間を七と数え誤まったのでもあろうか。いずれにしてもこの堂は、唐招提寺の金堂を重層にして拡大したような、壮大なものであった筈である。ダルメイダはこの堂を取り巻く廻廊と、それに取り巻かれた庭との美しさを特筆しているが、この美しさの印象に大仏殿の印象が籠っていない筈はないであろう。大仏の大きさはさほど彼を驚かさなかったが、立ち並ぶ九十八本の太い柱は彼に強い刺戟を与えた。日本のように開けた、思慮のある国民が、こんな壮大な殿堂を築くほどまでに悪魔に欺かれているとは、実に驚くのほかはない、と彼は感じたのである。