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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
こういう助力によって遂にキリスト教排斥派を鎮定し得た天草の領主は、やがて新来のカブラルの手によって受洗するに至った。こうして有名なキリシタン地方天草領は、トルレスの最後の仕事として、ダルメイダによって開拓されたのである。
しかしトルレスが大友宗麟の勢力を利用したのは、天草領についてのみではなかった。宗麟の北九州制覇が都合よく進み、毛利の軍勢を北九州から追い払ったのは、一五六九年の夏から秋へかけて半年に亘る大仕事であったが、この際逸早く山口の教会の回復を思ったのは、トルレスであった。彼は一五六九年の十一月にダルメイダをして日田の陣営に大友宗麟を訪ねしめ、天草布教に対する援助を謝すると共に、また「山口の正統の領主たるチロヒロ」との連絡のことを相談せしめている。ダルメイダはその足でチロヒロの陣営を訪ねた。チロヒロは毛利勢が筑紫に進撃している隙をねらって山口を襲撃しようと企てていたし、その部下には、山口のキリシタン武士がいたのである。彼はダルメイダの要求に応じ、山口を回復したならば領民をキリスト教徒たらしめるであろう、というトルレス宛の返書を認めた。このチロヒロの山口領襲撃は、大友宗麟が大内四郎左衛門輝弘をして軍勢空虚の長府あたりを奇襲せしめた事件を指すのであろう。