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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

三 追放綸旨の効力問題――日乗と惟政との対立

そうして翌日、途中まで見送った和田惟政に、安心しているがよい、というフロイスへの伝言を託したのであった。

三 追放綸旨の効力問題――日乗と惟政との対立

しかし信長が京都にいなくなると、日乗のキリスト教排撃は急激に力を得て来た。フロイスの報告によると、信長出発後五日目の五月十二日に、古いキリシタンの結城山城守がロレンソを通じて最初の情報を伝えたといわれる。日乗が宣教師追放の新しい綸旨を得て将軍にその実行を迫ろうとしている、神父は急いでその備えをしなくてはならない、というのである。この情報と殆んど同時に、ベルシヨールもまた別口の噂をもたらして外から帰って来た。それによると、日乗は内裏の庇護の下に武装兵を率いて神父を襲い、キリシタンを皆殺しにしようとしている、というのであった。この五月十二日(永禄十二年四月二十五日)に、何か綸旨が出たことは事実であるらしい。御湯殿上記に「四月二十五日はてれん、けふりんしいたされて、むろまちとのへ申され侯」とあるのがその証拠である。しかしこれだけでは布教許可の沙汰であったと解する人もある。信長の布教許可の十七日後、将軍のそれの十日後に、それと全然反対の追放の綸旨が出たとは考えにくいのである。