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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

すると将軍は初めの計画を変更して宇治の槇の島に移ることにきめ、婦女子や家財の運び出しをはじめた。京都の市民はそれを見て再び恐慌に陥り、同じように女子供や家財の搬出に狂奔した。当時病中であったジョアンは、それを聞いて急いで城に馳せつけ、出発のために将に馬に乗ろうとしていた義昭をとどめて、その場に居合わせた大身たち一同の面前で、この移転を諫止した。京都市民は将軍を愛するが故にこの絶大な災禍に逢ったのである。その将軍が今京都を見捨てるならば、将軍の名誉と尊敬とは、全然失われてしまうであろう。自分は死を賭してもこの城を守る。是非留まってもらいたい。この意見には、将軍に随行しようとしていた大身たちも、賛成した。そうして義昭は移転を思い止まった。市内の動揺も静まった。このジョアンの諫止は市民の間にも非常に好評判であった。

同じ頃に三好三党や本願寺などの聯合軍は、大坂と京都との中間まで進出していた。高山ダリヨは危険を慮ってフロイスを高槻の城に避難させるため人馬を京都に寄越した。丁度その時に三好の軍中からもキリシタン武士たちの書簡を携えて使が来た。それによると、三好の軍隊が京都に入るかどうかはまだきまっていないが、もし入ることになれば、会堂のある町はキリシタン武士たちが責任を以て保護するから、避難するに及ばない、という