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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
十日目にはもう槇の島の攻撃がはじまったが、これも一日で陥ちそうになった。義昭は和を請うた。信長はさすがに殺そうとはせず、どちらへでも送ってあげろと云って秀吉たちに処置をまかせた。そこで秀吉らは、将軍方についた三好義継の居城、河内の若江へ義昭を送り届けた。義昭はこの後も本願寺や毛利の勢力に頼って信長に反抗し続けるのであるが、しかし信長の眼中にはもう彼はなかった。足利将軍の伝統的意義はここで壊滅してしまったのである。
このことは京都では形の上に示された。上京を兵火によって破壊したのは、信長ではなくして足利将軍の責任である。信長はただ、市民の不幸に同情して復興を助ける。そのために彼は、地子銭及び諸役の免除、鰥寡孤独の扶持、そのほか種々の技術において名人と呼ばれるものの保護、儒学の奨励などを布告した。市民は古い伝統を担う将軍よりも、実力を持ったこの新しい英雄の方を喜び迎えたのである。
この新しい形勢を完成するかのように、信長は、すぐその翌月に、浅井朝倉を討滅してしまった。それは僅か二十日ほどの間の出来事であった。信長は江北の浅井の城を押えて置いて、朝倉の援軍に強圧を加え、近江から越前へ続く峻嶮な山地のなかを追撃して行った。