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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
これによって見ると、宗麟夫人はあくまでも強硬であり、宗麟は幾分の譲歩を希望していたのである。カブラルは夫人の申出は単純に拒絶したが、宗麟の申出に対しては自己の立場を詳細に説明した覚書を送った。こうして対峙の形勢は一層緊張したのであった。
がキリシタン武士の殉教の情熱は、会堂を容易に攻撃すべからざるものにしたと共に、宗麟夫人の側に有力な口実を与えることになった。それは、キリシタン武士たちの所行が一向一揆に類似するというのである。宗麟夫人にとっては、おのれの次男親家がキリシタンとして会堂側についていることが、口惜しくて堪らなかった。だから親家と親虎とがこの宗教一揆の領袖であると主張することをさえ辞せなかった。丁度信長が石山本願寺の反抗に手を焼いていた頃のことであるから、これは一国の政治にとってまことに「重大な問題」に相違なかった。フロイスが、キリシタン武士たちはカブラルの意志に反して会堂に集まり、またカブラルに隠して武器を持ち込んだ、と特筆しているのに見ても、この非難がいかに有効であったかが解るであろう。
領主の宗麟も世子の義統も、宗麟夫人側の主張を無視することは出来なかった。