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さこく

鎖国

和辻 哲郎

日本の悲劇

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页

青空文庫

洗礼名も、シャビエルを記念してフランシスコとしてほしいと言った。そういう風にだんだん信仰の熱が高まって行ったのである。

カブラルが旅行に出たあとへ、フロイスが府内から留守番にやって来た。翌日宗麟は宣教師館を訪ねて二時間ほどフロイスと語り合った。フロイスも宗麟を訪ねていろいろな話の間に巧みに機会を捉え、宗麟の受洗の希望が、神の恩寵によって起ったものであることを説き聞かせた。これは宗麟の心に沁みたと見え、十六歳で初めてポルトガル人を見、二十二歳でシャビエルに接して以来の、永い年月の間の心の経歴を、ふり返って見る気持にならせた。その述懐を聞いたのは日本人イルマンのダミヤンであった。がそういう気持の中ででも、宗麟は頻りにローマ教会の制度のことをフロイスに質問しているのである。

カブラルが一カ月で旅行から帰ってくると、宗麟は待ち兼ねたように催促して洗礼を受けた。一五七八年八月二十八日であった。この洗礼は豊後の国内でも、近隣の諸国でも、かなり人々を驚かせた。宗麟ほど学問あり、禅宗にも通じた人が、キリシタンになる筈はない、という人もあり、またあれほどの人がキリシタンになる所を見ると、キリスト教はよいものであろう、という人もあった。