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さこく
鎖国
和辻 哲郎
日本の悲劇
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 443,306 字 · 875 页
に苦心した。このスペイン側の宣教師たちは、一五九六年の大殉教にもひるまず、依然として日本進出に努力し、一六〇二年の如きは、マニラから渡来するもの十五人に達したのである。セルケイラはその年の秋マニラに書簡を送って、このような行動がいかに危険であるかを警告している。第一、家康はキリスト教を好まず、仏教に熱心である。貿易の必要から宣教師の滞在を大目に見ているが、公認しているのではない。第二、家康初め諸大名はスペイン人が侵略者であり、布教は侵略の手段に過ぎぬと信じている。これらの理由によって、スペイン宣教師の大挙来日は、教会に対する迫害を激発する怖れがある。その徴候はすでに顕著だといってよい。家康は宣教師の到着に関して、「あいつらはまたはりつけになりたくて来たのか」と云ったという。側近の高僧(相国寺の承兌)の策動で、毛利の山口、細川の小倉、黒田の博多などには、すでに迫害が起り、或はまさに起ろうとしている。この調子で行くと大殉教のようなことがまた起らないとも限らない。だからスペイン宣教師の無思慮な行動は実に危険である、というのであった。
セルケイラの態度は、出来るだけ控え目にしていて家康以下諸大名の疑念を解き、布教公認を取り戻そうというのであって、巡察使ワリニャーニと相談して立てた方針を守っているのである。