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やまのじんせい
山の人生
柳田 国男
山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页
という書には説いてある。
その草履の大きさは三四尺、これを山丈の鞋と称すとある。『四隣譚叢』などによれば、信州は千隈川の水源川上村附近の山地においても、山姥の沓の話を信じている。藤蔓を曲げ樹の皮をもって織ってあるなどと、なかなか手のこんだもののように言い伝えているのである。大きいと言えばすぐに長さ三尺の四尺のと書かなければ承知せぬが、かりにこれに相応するような大足の持主があるにしても、そんな物を履いて山の中があるけたものでない。我々風情の草履ですらも、野山を盛んに飛廻っていた時代には、アシナカ(足半)と称するものを用い、または単に繩で足の一部分を縛って、たいていは足一杯の草履は履かなかった。すなわち足趾のつけ根の一番力の入る部分を、保護するだけをもって満足したのであった。
ただしこの類の話などは、誇張妄誕といわんよりも、むしろ幻覚であったかと思う。見たかと思ったらすぐになくなっていたというようなもので、確かな出来事ではなかったかと思う。いろいろ製法や材料配合の話はあっても、なおどこかで採集してきて博物館にでも陳列せられぬ限り、自分たちはこれをもって一種の昔話としておきたいのである。