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やまのじんせい
山の人生
柳田 国男
山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日
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ただしこれをも我々の実験の中に算えて、見た出逢ったというのと同じ程度の、信用を博している物語は多いのである。少なくともその二三の例は、のちの研究者のために残しておく必要があると思う。
『白河風土記』巻四に、「鶴生(福島県西白河郡西郷村大字)の奥なる高助と云ふ所の山にては炭竈に宿する者、時としては鬼魅の怪を聴くことあり。其怪を伐木坊又は小豆磨と謂ふ。伐木坊は夜半に斧伐の声ありて顛木の響を為す。明くる日其処を見るに何の痕も無し。小豆磨は炭小屋に近づきて、中夜に小豆を磨する音を為す。其声サク/\と云ふ。出でて見るに物無し、よりて名づくといへり。」
『笈埃随筆』巻一に、「途中にて石を撃たるゝこと、土民は天狗の道筋に行きかゝりたるなりと謂ふ。何れの山にても山神の森とて、大木二三本四五本も茂り覆ひたる如くなる所は其道なりと知ると言へり。佐伯了仙と言ふ人、豊後杵築の産なり今は京に住めり。此人の云ふ。国に在りし時、雉子を打ちに夜込に出でたり。友二三人と共に鳥銃を携へて山道にかゝりしに、左右より石を投げたり。既に当りぬべく覚えて大に驚きたる中に、よく心得たる者押静め、先づ下に坐せしめて言を交へずしてある程に、大石の頭上に飛びちがふばかりにて其響夥しかりしが、暫くして止みければ、立上りて行きける。