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やまのじんせい
山の人生
柳田 国男
山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页
または隠し婆さんに連れて行かれるといって、小児を戒める親がまだ多い。村をあるいていて夏の夕方などに、児を喚ぶ女の金切声をよく聴くのは、夕飯以外に一つにはこの畏怖もあったのだ。だから小学校で試みに尋ねてみても分るが、薄暮に外におりまたは隠れんぼをすることが何故に好くないか、小児はまだその理由を知っている。福知山附近では晩に暗くなってからかくれんぼをすると、隠し神さんに隠されるというそうだが、それを他の多くの地方では狸狐といい、または隠し婆さんなどともいうのである。隠し婆は古くは子取尼などともいって、実際京都の町にもあったことが、『園太暦』の文和二年三月二十六日の条に出ている。取上げ婆の子取りとはちがって、これは小児を盗んで殺すのを職業にしていたのである。なんの為にということは記してないが、近世に入ってからは血取とも油取とも名づけて、罪なき童児の血や油を、何かの用途に供するかのごとく想像し、近くは南京皿の染附に使うというがごとき、いわゆる纐纈城式の風説が繰り返された。そうしてまだ全然の無根というところまで、突き留められてはいないのである。
しかし少なくともこの世評の大部分が、一種の伝統的不安であり、従って話であることは時過ぎて始めてわかった。