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やまのじんせい

山の人生

柳田 国男

山の人生「アサヒグラフ 第四巻第二号~第五巻第七号」朝日新聞社、1925(大正14)年1月7日~8月12日<br>山人考「大正六年日本歴史地理学会大会講演手稿」1917(大正6)年11月18日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 116,022 字 · 226 页

青空文庫

多分は軒の上に誰かがいて、女が外へ出るや否や、ただちに空の方へ引張り上げたものだろうと、解釈せられていたということである。

単なる偶然からこの地方の話を、自分はまだいくつとなく聴いて記憶している。それが特に他の府県に比べて、例が多いということを意味せぬのはもちろんである。同県上閉伊郡の鱒沢という村で、これも近世の事らしいからもっと詳しく知っている人があろうが、或る農家の娘物に隠されて永く求むれども見えず、今は死んだ者とあきらめていると、ふと或る日田の掛稲の陰に、この女のきて立っているのをみた人があった。その時はしかしもうよほど気が荒くなっていて、普通の少女のようではなかった。そうしてまたたちまち走り去って、ついに再び還ってこなかったといっている。『遠野物語』の中にも書いてある話は、同郡松崎村の寒戸というところの民家で、若い娘が梨の樹の下に草履を脱いで置いたまま、行方知れずになったことがあった。三十何年を過ぎて或る時親類知音の者が其処に集まっているところへ、きわめて老いさらぼうてその女が戻ってきた。どうして帰ってきたのかと尋ねると、あまりみんなに逢いたかったから一寸きた。