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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

つらい恥に剋って来い。値によらず、早いがいいぞ』

『はい。では……』と、清盛は父の部屋から、すぐ、厩へ行った。――七頭いる馬のうち、三頭ほどは、自慢のものだ。あとの四頭のうち、どれにしようと見くらべるが、可愛くないのは、一頭もいない。

あわれ、駄馬といえども、これらの馬どもは、過ぐる年の、西国遠征のときも、生死をともにした仲である。どのハナづらも、朝夕に、何百ぺんなでてきたやつか知れないのだ。

日ごろ、塩小路のわんわん市場の付近では、馬市が立つのを知っている。清盛はやがて、そこでよく見る博労の家へゆき、馬を売って、酒を買い求めた。――大きな酒がめを三つほど、手車の上に乗せ、酒売りの男と一しょに押しながら、ほどなくまた、今出川へ帰ってきた。

晩い夜食とはなったが、秋の夜は長い。

ことには、この家として、めずらしい大振舞というべきである。

忠盛は、家の子郎党から、留守していた小者までを、広床の一間に寄せ集めて、

『思いのまま、飲んでくれい』

と、一同へ、酒瓶をひらいた。非常の備えに貯蔵してある塩魚や漬物も、開けさせてこういった。

『夜昼、七日の辻立ち。さぞ疲れたことだろう。