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しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
02 ちげぐさの巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页
『美しい母御前と、スガ目殿との夫婦喧嘩で、また、わが家にもいたたまれずに出て来たか』
『うんにゃ。母は、寝こんでいる』
『病気でか……』盛遠は、冷笑した。
ふたりは、勧学院の同窓だった。年は、清盛が一つ上だが、学生のころから、盛遠のほうが、ずっとおとなびていた。学問でも、清盛はかれの足もとにも追いつけなかった。教授の文章博士などからも、俊才といわれたり、将来の逸材と、属目されていた盛遠なのだ。
『あははは。申しては、失礼かもしれぬが、あの女性の病などは、気まぐれ病、わがまま病ときまっている。なあ平太。くよくよするなよ。それよりは、どこかで、酒でも飲もう』
『え。酒……』
『そうさ。祇園女御は、幾人の子の母になろうと、やはりむかしの祇園女御だった――というに過ぎないはなしじゃないか』
『盛遠。だ、だれのことだ。祇園女御とは』
『知らないのか。……わぬしの、母の前身を』
『知らぬ。……和殿は、知っておるというのか』
『おう。聞きたければ、話してやる。ともかく、おれについて来い。スガ目殿は、宿命としても、若い平太までが、青春をしぼませてなんとするぞ。――日ごろから、ひとごとならず思っていたところだ。