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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

……で、今に、俵も風に飛ぶほど、軽くなるであろうと思うて)

と、答えて、退がったという話もある。

また、南都、叡山などの荒法師の行状やら、公卿堂上たちの奢りやら、後宮の迷信だの、官職の争奪だの、およそ社会愚や人間悪の目につく弊をことごとく漫画にした鳥獣戯画という幾巻かの絵巻を描いて隠し持っていられるのを、こうて、見せてもらったという人もある。

人間を、獣に擬して、狐と兎の競馬だの、狸僧正の祈祷だの、また衣冠した蛙同士の喧嘩やら、示威運動やら、化かし合いやら、見方によっては、おそろしく世を憤っているか、あいそをつかし果てたか、どっちかの、諷刺である。

ところで。――きょうも僧正は、何か、世間への悪態を絵筆にいわせて描いていたが、途中、客があって、反古も硯も、そっち退けになっていた。

客は、僧正から見ると、孫ほども年のちがう、院の北面の侍、佐藤義清であった。

『まことに、おうらやましい御生活ですな。お会いするたびに、思います。僧正のように過ごされてこそ、ほんとの、人間の生涯。自然とともにある生命と申すものであろうと』

『うらやましければ、あなたも、すきのように、生きたがよかろうによ。