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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

世俗の才には先天的に欠けている生まれつきに依るものだった。それにしても、以後はなおさら、この老木は、八方ふさがりの孤立となった。

忠盛は、かれの友誼を、胆にめいじている。ふかく、徳として「忘れてはすまない人……」と、つねに子どもらへも、話していたことだった。

『あぶない。……ほら。また水たまりだよ』

時忠は、松明を、清盛の足もとにさしのべた。のべつ、注意を与えながら、大藪道の夜を歩いてゆく。

清盛は、酔った。ほんとに酔っている。

――大丈夫。お送りなどは御無用と、かたく辞したが、時信もあやぶむし、第一、姉姫の時子がきかなかったのである。

(弟よ。時忠よ。お客人を、西七条の畷のあたりまで、お送りしておあげなさい)

清盛が、そこを辞して帰るころには、この姉姫も、どうしてどうして、そう、露おもたげな深窓の花の風情だけではなかった。笑いもするし、はきはきと答えもする。気のせいか、自分を見る眼も艶にちがう。

――だが十九だ。清盛は、妙に、年にこだわった。何だか、姉みたいな気がするのである。瑠璃子の印象にかさなるせいかもしれないと思う。しかし明朝、父忠盛の前でする答えはちゃんとはらにきめていた。