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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

そのくせ、平太清盛をかしらにして、次男の経盛だの、三男坊だの、四男坊だの、子どもばかりは、次つぎに、産まれていた。

その父は、しかも、とかく官途をきらって、鳥羽の院へも、御所の衛府へも、特に、召されでもしない限りは、出仕した例がない。家計は、伊勢の禄地から上がる稲が唯一の収入で、おりおりの賜わり物だの、役得のみいりなどは、一切、なかった。

清盛にも、このごろやっと分かってきた。両親のいがみあいも、原因はいつもそこらにあるらしい。母は、口達者で、良人の忠盛からいわせると――油紙に火がついたようによく喋べる女――なのである。

かの女が、忠盛へ、まくしたてるきまり文句は、いつも、こうだった。

『ふたことめには、良人に向かってと、すぐこわい顔をなさいますが、わが家に、そんな立派な良人顔があるとは、思いもよりませんでしたよ。あなたは、もともと、伊勢平氏のいなか育ちで、汚い貧乏も、性に合っているかもしれませんが、わたくしは、都そだちです。親類縁者とて、みな藤原一門の公卿堂上ばかりですからね。こんな雨もりだらけな屋根の下で、年じゅう、芋粥や稗飯ばかりをかみつぶし、秋といっても、月見の御宴に伺えるではなし、春が来ても、豊楽殿のお花見などは、他人のこと。