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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

人間ともむじなとも分からぬ日を、毎日こうして、くり返してゆく生活なんて――わたくしは、自分の未来に、夢にも思っていませんでした。……ああ、わたくしは何という、不しあわせな女なのであろ。……子どもさえいなかったら、こんな女の一生を送ってはいなかったのに』

この程度は、序曲である。忠盛さえ、黙っていれば、めんめんたる愚痴と悲嘆は、終わることを知らないのが常であった。

いったいかの女は、どんな点を、最もいいたいのか。天に哭し、地に訴えたいのか。子の清盛も、聞き飽いているが、要約すれば、およそ次のようなことらしい。

まず第一は、良人なる忠盛が、懶惰で、生計をかえりみない。幾年でも、家にこもって坐食しているほか、何の能もない。

第二の不平は。――自然、親類の藤原一門とも、往き来がたえ、宮中の五節会やら、おりおりのお催しなどにも、気恥かしくて出られない。あたら、栄花のできる身に生まれながら、つい女の一生を、めちゃくちゃにしてしまった。……という痛恨。

以上のほか、ややもすると。「子どもさえなければ――」という喧嘩の口走りがきっと出る。

母の、その最後の極まり文句は、未熟な清盛の心をぐざと刺した。