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しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
02 ちげぐさの巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页
奉書らしい文包みを、大事そうに持っていたので、見せろといい、見せぬという。――それから感情になって、なぜ見せられぬかというと、これは、さるお方のお歌の返しである。歌など御覧になっても、お分かりはあるまい――と、一方がいったとある。
『で、どうしたのか』
『由井五郎が、やにわに、奪って、足で、踏みつけたものですから、佐藤どののお召使は、怒って、これなん、待賢門院の紀伊ノお局より、主人義清へ、お歌の返しなるに。――泥にされて、主人へ、何の面向けやある。と暴れ狂うのを、羅生門の同勢、みながかかって、足蹴、袋だたきの目にあわせ、獄へ投げ入れたものと分かりました』
『そうか。……義賢を呼べ』
呼ばれて来た次男は、まだ二十歳にみたない小冠者だったが、為義は、部下の乱暴は、なんじの罪であるとしかって、座を立つやいな、縁から内庭へ、蹴落した。
そして、客の義清にむかっては、
『由井五郎も、次男義賢も、そこもとの御成敗におまかせする。紀伊ノお局へは、自分がお詫びに参上して、罪、為義にある由を申しあげておこう。……お召使には、まことに、御災難だった。遺恨にふくまず、どうか忘れてもらいたい』