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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

――そして佐藤義清と、内庭に面した板じきの室で対面した。火の気もなく、ただ一火の松あかりを灯皿にくべて、客の来意を、聴いたのであった。

やがて、嫡子の義朝は、客と父の影から遠く、板縁に、かしこまって、

『――御用は』と、手をつかえた。

よい息子――と、義清は見ていた。

父為義から、いいつけをうけると、かれはすぐ立ち去った。そして獄舎部の武者や雑色を呼びたてて、きびしい取り調べを行ったらしい。

ほどなく。――義朝は、庭かがりのわきに、ひざまずいた。

『つれまいりました。佐藤殿のお召使と、喧嘩あいての、由井五郎と申す武者を』

ひとりは、義清の郎党、源五兵衛にちがいなかった。

ふくろだたきにでもなったように、源五兵衛の顔は、はれあがっていた。主人義清のすがたを、思いがけなくそこに見て、かれは、ただ泣いてしまった。

『五郎は、たれの手の者か』

と、為義は、訊いていた。

御次男義賢様の手の者――と下で答えた。

『喧嘩の仔細は』

と、また訊くと、義朝が、調べたところを、次のように、話した。

きょうの午ごろ、羅生門を通った源五兵衛が、そこを守っていた義賢の部下にとがめられた。