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しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
02 ちげぐさの巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页
――まさに、仏教の繁昌は、南、菩提樹林の熱帯の国から、大唐大陸を経て、いまや四季の国、歌の国のここ日本の地に移り咲いて、らんまんたる浄土天国が顕現されているようにさえ――眼には、見えもするのであった。
かつは、皇室にも、御慶事が多かった。
皇太子重仁が、お生まれになった。
お若い崇徳帝には、はやくも、父となられたのである。
ところが、帝の父、鳥羽上皇もまた、寵姫藤原得子(美福門院)とのあいだに、皇子体仁の誕生をみられた。
上皇の御意志で、皇太子重仁は、親王におかれ、体仁親王をたてて、皇太子とされた。
当然。崇徳のおこころは、安らかでない。
もっと、複雑で、おつらいのは、待賢門院(藤原璋子)の皇太后としての、お立場だった。
こうした宮中のうごきも微妙。社会情勢も多事。総じて、世上はなんとなく、騒がしいものがあったので、鳥羽上皇は一、二度ならず、今出川の忠盛の許へ、ひそかなお使いを立てられて、
『出仕せよ。顔を見せよ』と、促された。
忠盛が、再度、院庭に仕え始めたのは、孫の重盛が生まれたその年であった。翌年には、官位も五位の刑部少輔に挙げられ、子息清盛にも、昇官の内旨があるなど、久しい貧乏平氏にも、このところ、吉事がつづいた。