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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

お若い天皇の御意は、何ひとつ行われもしなかった。

それは、まだしも。

白河が璋子を愛し給うことは、度にすぎていて、鳥羽の中宮に立たれた後も、璋子は、法皇の宮へ自由に出入りされていた。(古事談ニ拠レバ)――留宿累日、法皇と並び臥し給い、その間、近臣といえども奏するを得ざりし――というような御行跡であったという。

あまつさえ、やがて、皇子が生げらるるや、ただちに冊して皇太子にたて、そのわずかに四歳の幼児をもって、白河は、鳥羽天皇の御意志をまげて、その御位を譲るように強い給うた。その幼帝が、いまの崇徳である。

それでも、鳥羽は、祖父白河の御在世中は、毫も、御無念を色にあらわさなかった。待賢門院とのおん仲も、平凡に過ごされて来た。けれど、大治四年、法皇崩御の後は、一変された。すべての万機を院中に決し、天皇崇徳をさして、お戯れにも――あれは、わが子ではない、祖父児よ――と仰っしゃったり、また待賢門院にたいしても、今は、一顧の御車を回らしたこともない。

それも、むごい。余りに、冷たい。――おりには、上皇御自身も、かえりみて、みずから問うことも、おありには違いない。