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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

それを、持仏堂へ、投げ入れるやいな、家じゅうの悲嘆と、号泣のあらしを後に、どこへともなく、走り去ってしまった――というのが、綜合された、人びとの風聞だった。

それから、十数日は、経った。

すると。佐藤義清は、もう法衣姿となって、名も、西行と称している。そして東山の雙林寺付近にいたり、ときには、奥嵯峨のあたりを、歩いているのを、見た人もあるといううわさも聞こえた。

惜しむとて惜しまれるべきこの身かは

身をすててこそ身をも助けめ

『若いのに、こんな歌すら詠んだことのある義清だ。きのうやきょうの決意ではあるまい。――遁世ではなく、むしろ、一歩高く、強く、生きようとしての、出家であろ』

この説明は、清盛の不審にたいして、舅の時信が、かれに答えたものである。

清盛には、いよいよ分からなかった。いちど、父忠盛にも、質してみよう。――そう思いつつ、かれは、いつのまにか、忘れてしまった。かれの前には、かれの前から消え去ったいくつかの友の顔よりは、もっと、逞しい夢をそそる時代の形相と、大きな現実の足どりとが、やがて、次つぎに、起こっていた。

女院と西行

改元されて、保延七年は、夏の七月十日からさき「永治元年」