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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

――何をしての、流罪であろぞ』

雪もいとわない人だかりである。

西行は、べつな方へ、曲がろうとしたが、そこも人や馬で、通れもしない。

検非違使の武者が、つじをかため、万一に備えている様子から見て、罪人は、家人も持っている、しかるべき身分の者と、おもわれた。

『オオ、あの裸馬ぞよ。おいたわしや。……日ごろ、おやさしい、み台所様も、散位様も』

出入りの街の女房たちでもあろうか、おろおろ声で、人びとの間に、背伸びするもあり、面をおおうて、よよと、泣くのもある。

そのうちに、割り竹を持った六条の下司(下役人)や放免たちが、

『退け、退け。道を退きおれ』

『退きおらぬか』

と、路地の口から往来の左右を、いわゆる“恐らしき者”といわれる権柄と叱で、群集を、押しひらいた。

狼藉を極めたそこの屋敷門の内から、二頭の裸馬の背にくくし付けられた流人の夫妻がひき出された。前後には、追立ての武士、役人などが、ものものしく、護り固め、――ひとりの下司は、板に書いた罪文を、手に掲げて、先を、歩き出した。

罪文には、こう読まれた。

散位源ノ盛行、并ニ、妻、津守嶋子ヲ、

土佐ノ国ヘ、配流ニ処ス。