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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

待賢門院ノ仰セヲ奉ジ、国母皇后ノ宮

(美福門院)ヲ咒咀シ奉ルノ罪ニ依ルナリ。

太政官執行

盛行も、妻の嶋子も、もう白髪の多い老人であり、夫婦して、女院の下に、長く仕えていた家職の者であった。

西行も、前から、ふたりをよく知っていたので、変りはてた夫妻の姿に、思わず、声を発して、悲しんだ。――とたんに、道の両側からわらわらと、裸馬のそばへと、馳け寄って行く者が見えたので、西行も、われを忘れて、その人びととともに、

『散位どの。……盛行どのっ……。お名残り惜しいことではある。おからだを、大事に召されよ』

と、叫びながら、なにか、歌反古の一つでも、餞別けしたいものと、つい、馬について、数十歩、あるいた。

すると、割り竹を持った“恐らしき人びと”が、たちまち、それを振りかぶって、馳けよりざま、

『この、凡下めら、また寄るか』

と、撲りまわった。

西行は、そんな者の竹に、たやすく打たれるような者ではなかったが、意外なできごとの驚きと、多少、気もちに乱れもあったせいか、雪にすべって、騎馬役人のひづめの先に、あっと、よろめいたまま、後のことを、知らなかった。

……ふと、気がついた時は、身は、路傍の雪泥の中につっぷしており、あたりには、人も馬も見えなかった。