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しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
02 ちげぐさの巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页
この急激な、地下人の優遇や、武人色の表面化は、決して、公卿殿上の、好む傾向でないにはきまっている。――が、眼をつむって、従来の方針を、こう一変させて来たほど、世はまさに、険悪なのにちがいない。武力なしにはいられない猜疑と不安の結果である。また、保守心理の狼狽でもあった。
一院(鳥羽)と、新院(崇徳)との、御父子の冷やかなおん仲は、せっかく、相互のあいだに、唯一な緩衝地帯となっていた待賢門院の御出家を機として、俄然、真二つの峰と峰とにしてしまった。
群臣は、その谷あいのものである。かれらも、大きな動揺をきたし、いずれの峰へ拠る者も、内心、さまざまな迷路を持った。複雑なうごきや、策謀が行われ出し、あすをも知れない不安に、駆られ出したのはいうまでもない。
これに、拍車をかけて、いよいよ暴威をさかんにしているのが、叡山、三井、奈良などの、武装された僧団の大衆である。
かれらへの朝令は、一として行われたためしがない。なんぞといえば、強訴であり、合戦ざただ。到底、武力なしには、官庁でも、かれらと応待できないという有様である。
ここ数年間に――
忠盛、清盛父子を始め、六条為義の配下などが、功をたてた事件といえば、そのことごとくが、僧団との、対抗であったといえる。