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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

(理由なく、源氏に拠り、平氏へ奔り、みだりに、武威をなすべからず)

などという入党禁止令も出たが、ほとんど、効はなかった。

正盛の亡きあとは、息子の忠盛が、あとをついだ。白河上皇は、気のおけない忠盛を、正盛以上、重宝におもわれた。

たとえば、こんな一例もある。

院のお住居は、三条西ノ洞院にあったが、そこからおりおり――きまって夜、加茂をわたって、祇園まで、おしのびになった。

供は、いつも、ただふたり。

武者所の忠盛と、その郎党、木工助家貞と、きまっている。

もちろん、おしのびは、ある女性の許へ、であった。上皇はすでに、六十路におちかいけれど、そのみちにかけては、なみなみならぬ御好色であったらしい。お年にめげぬお元気さは、政治方面における絶倫な御精力にも、あらわれていた。

ことには。――時代の風習からも、上皇が、愛人を外にかくまって、ときたま、お通いになるからといって、時人は、べつに異とも何ともしてはいない。男が、女の寝屋へ通うのは、むしろ上古の純風で、奈良朝や平安朝の宮人たちが、みな、行っていたことである。親王でも、関白でも、大臣たちでも、その程度の忍びごとは、なにもそう非人格的であったり、名誉にかかわる問題とはしていなかった。