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しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
02 ちげぐさの巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页
世上つたえられてきた油坊主の怪談が、その程度に、訂正されたところで、ことの真相には、何を加えるものではあるまい。――その年、忠盛へ嫁して、忠盛のやしきで、祇園女御が産みおとした男の子が、真実――たれの子なのか? ――という究極のなぞには、何のかぎともならないからだ。
帰するところ、その祇園女御の腹から出たことだけはたしかな――子の清盛が、いま、やっ起に、知ろうとしているかんじんな焦点は、どう木工助を責めても、かれの口から解かれ出るすべもなく、かれもまた、主家の血液の秘密にたいし、それ以上な臆測を加えることはできなかった。この問題の秘裏に立ち入って、それをなぞと考えてみるだけでも、郎党たる身にとっては、主家への反逆のように思えて、そらおそろしいことだったにはちがいない。
やっと、やや泣きじゃくりを収めた疳持の子のように、やがて清盛は、じじの木工助にかい抱かれて、やしきの内の暗い寝屋へはいっていた。
『さ。よう、お寝みなされませ。大殿のてまえは、朝となって、木工助が、よいようにしておきまするで。……お案じのう』
まるで、わが子へするように、木工助は、木まくらをそこへおいたり、衾を被せて、そしてまた、清盛の寝顔のそばへ、ひざまずいた。