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しん・へいけものがたり
新・平家物語
吉川 英治
02 ちげぐさの巻
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页
――が、清盛は、強いて、恬として、父へも母へも、虚勢を示しながら、また少しひざをすすめた。そして、叔父の忠正から借りてきた金を、無造作に、さし出した。
『堀川から拝借してきたお金です。すこし足りませんが、実は、友だちに会って、費いました。それから、小さい弟どもが、飢もじがっているので、経盛へも、少々、持たせました。残りが、これだけで……』
いいも終らぬうち、父忠盛の顔は、なんともいえないものに変った。自身を、恥じるような、あわれむような、また、堪えがたい憤怒の火でもどこかにつつむかのようであった。――ふと、わずかな金をそこに見たすが目の片方は、涙をためた瞼の引っつれを、常よりも醜いものにして、幾たびも、しばたたいた。
『……平太。そんなもの、おしまいなさい。なんですか! 座につくなり、おかねなど、ならべちらして』
泰子はかたく、良人と対峙のすがたを持ったまま、いやしむように、眼のすみから、子の清盛をしかりつけた。
祇園女御という名は、忠盛へ嫁ぐ前までのことで、中御門家の一女泰子として、籍は、この家に、移されていたのである。
母の横顔を見ると、清盛は、ゆうべからのものが、むらと、体に燃えてきた。