轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

そのかわり、いくら貧乏が迫ろうと、身の粧いは崩さなかった。見るに見かねて、召使たちが、食糧の工面もする。そして、垣の古竹やら床板をはいで炊ぎの焚き物にしたり、幼い子らが、垢じみた身なりでピイピイ泣きながら、尿の垂れながしをしていようと、かの女は知った顔つきではない。かの女は、良人にもだれにも冒させない塗籠の一室をもち、起きれば、蒔絵の櫛笥や鏡台をひらき、暮れれば、湯殿ではだをみがく。そしてはときどき、家人でさえ、あっと、びっくりするような衣装を着こんで、

(親類の中御門様へ、ごぶさたのお詫びに行ってまいります)

などと、貴人の外出そのままな容態で、近所の牛車宿まで、なよかに歩き、そこからいつも、牛車を雇って出かけてゆく。

『女狐じゃ……。あの美しさは』

召使まで、蔭ではいった。子飼いからの郎党で、もう髪も白くなりかけている木工助家貞なども、じっとこらえる眼をして、よく、泣きやまぬ子を背に負いながら、出てゆく子の母を見送ることがあった。夜も、厩のまわりを、かれの子守歌の声が巡り歩いていることが毎度であった。

そんなときさえ、忠盛は、黒い柱によりかかったまま、瞼をふさいで、黙然と、想い沈んでいるにすぎない。