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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

すると、縁に立ち現われた泰子付きの雑仕(侍女)たちが、煙に、まゆをしかめながら、また、

『そもじたち、何していやる? ……。御方にお風邪でもおひかせしたら、どうしやるぞ。うつけ者よ』

と、ここでも、ヘイライは、女房たちからさえ、犬猫みたいに怒られた。

天井は低く、床は、簀の子。まッ暗で、箱みたいな湯殿の中である。白い二つの女体が、寄り添って、じいっと、全裸に汗を浮かせていた。

そのころの湯殿というのは、みな室になっている蒸風呂であった。外のたき口で、火がハゼると、たちまち室中が白い湯気に満ち、中の温度は上昇してくる。

『ま、瑠璃子さまは、可愛らしいお乳をして。今ごろの、桜ンぼみたい』

『いやですわ、小母さまは。そんなにわたくしの体ばかり、見ていらっしっては』

『いいえ。この泰子にも、むかしは、あなたみたいな、はだの麗しい時代があったのにと、うらやましさに、つい、見とれるのですよ』

『でも。小母さまは、今でも、そんなにおきれいなはだをしていらっしゃるではありませんか』

『……そう?』と、泰子は、自分の乳くびを見た。白い項の伸びかたといい、全姿に浮いた玉の脂といい、瑠璃子がいったのは、お世辞ではない。