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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

実にや、雲の上といい、九重の大宮人というのも、誇張ではない。とりわけ、鳥羽上皇の御座をめぐるあたりの諸公卿は、際だって、華やかな粧いにみえた。

これは、上皇が、お好みによるものか、あるいは、側近から生じた流行かわからないが、とにかく鳥羽院を中心として、近年、妃嬪や公卿の服飾が、華奢になってきたことは、非常なものである。

烏帽子のかたちにも、衣服の色にも、洗練された神経が見られ、強装束という一種の風を作ったのも、鳥羽院からの流行であり、また、男性が、面に粉黛をほどこしたり、たもとに香を秘めるなども、この院からの時粧である。

しかし、流行の端はここからでも、それを欲する時好の素地は一般にあった。朝廷方でも、みな時好にならい、男でも、うす化粧して、まゆをかき、紅さえほおに刷いている若公卿が殖えて来ている。

しかも、きょうは、加茂のはれの日。われ見よがしに盛装を競いあっていた。冠のおいかけに、藤の花をかざし、ふんぷんたる香いに風を染み、紫のさざ波たてている一群もある。

だが、見方をかえれば、時粧や流行の競争も、院と朝廷との、対立意識のあらわれといえないこともない。