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しん・へいけものがたり

新・平家物語

吉川 英治

02 ちげぐさの巻

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 123,012 字 · 245 页

青空文庫

おととし、海賊の平定の功で、忠盛が、めずらしくも朝廷から賜わった恩賞の品じなも、一封の金子も、有ればあるにしたがって、かれの妻の浪費と、ことしの病気とで、むなしく消え、昨今はもう朝晩の粥すら、すすりかねて来た。

そこで、毎度なので、書きにくそうな手紙を書いた忠盛は、清盛にさえ、いいにくそうに、

(平太。また、すまんがのう、叔父御のところまで、行って来てくれい)

となったきょうの使いなのだった。

それはいい。それは忍ぶとしても、出がけに、

平太よ。また、帰りに、塩小路などを、うろつくなよ――。の一言は、気にくわない。

『子どもにだって、少しは、楽しみがあってもいいだろう。あわれや、この春で、おれも青春二十歳になる。その若さで……叔父貴のやしきへ金借りとは』

自分で自分がいとしまれた。こう思っても、決して、不逞ではあるまいと、清盛は考えかんがえ歩いていた。

『またかよ。平太……』

叔父の忠正は、手紙を読んで下におくと、実にいやな顔をした。手紙が求めているものを貸してはくれたが、叔母も出て来て、

『なぜ、和郎は、母方の身よりへ無心に行きなさらぬ。わろの母御前は、みな、れッきとした、藤原の朝臣とやら、中御門様とやら、きら星な御貴人ぞろいではおわさぬか。