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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

07 第七分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页

青空文庫

「いくさだ」

と感じるものが漲っていた。

岡山から敵の高松城までは一日足らずの行程。騎馬なのでなお早めに行き着こう。黒田、蜂須賀の両使に、随行の市松、虎之助、そのほかを加えておよそ十名ばかりの一行だった。

重厚な味方の前線陣地を行き抜けて、吉備山脈の彼方に赤い西陽を仰ぐころから、一行はしばしば、

「とまれッ」

「どこへ参る」

と、山蔭や林の暗がりから咎めをうけた。もう出会うものは、敵の人ばかりだった。ここには岡山の城下に見るような春もない、人もない。田に百姓の影すら見あたらなかった。

敵の前線から城下の柵門へ早馬の駈けてゆくのが見られた。城内のさしずを仰いだものらしい。やがて迎えに来た部将の案内に従って、使者たちは柵門に入りまた城門へかかった。

高松の城は平城だ。大手へかかる道の左右までが田圃や野である。深田の中に一叢の林と堤と石垣を構え、そこから石段を登るごとに本丸の狭間や剣塀が頭の上へ近づいてくる。

本丸に入ると、さすがに国境七城の主城だけのものはあって、城中はかなり広く、守兵二千余人を容れながらなお寂たるものがある。

いや、いまこの城内には、その二千余の兵以外に、なお三千余人の人命を収容していた。