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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

07 第七分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页

青空文庫

わしを秀吉ずれの下におき、山陰へ討ち入れとの令は、すでにやがて来る明智家の運命を予報しておるものでなくて何ぞ。――身、武門にそだち、男として土岐源氏の血をうけながら、やわか、信長ずれの駆使に身を屈め、生涯を終ろうや。光春、お汝には読めぬか、信長の腹ぐろさが」

「…………」

憮然と口をとじた後、光春はたずねた。

「その御意志は、御左右の中の誰と誰に、お打ち明けになりましたか」

「――されば、お汝を除いては光忠、光秋のほかに……」

と、光秀はここでほっと息をついで、

「腹心の者、妻木主計、藤田伝五、四方田政孝、並河掃部……村上和泉守、奥田左衛門、三宅藤兵衛、今峰頼母……。そのほか、溝尾庄兵衛、進士作左衛門、斎藤内蔵助利三……などにも語っておる」

「その十三名だけでございますか」

「天野源右衛門の名は挙げたかの、まだか。……源右衛門にも告げたと思う。若輩であるが、特殊な使いを命じたため、四方田又兵衛も、光秀の心底を、或る程度、覚っておるものと思われる」

「――ああ」

左馬介光春は、聞き終るとともに、天井を仰いで長嘆した。そして、

「今さら何をか申しましょうや。御自身以外へ、さまでお洩らし遊ばしている以上は」