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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

07 第七分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页

青空文庫

もちろん、信長を中心に、そのうしろ、その横の廻廊では、

「寄せじ」

とする近衆小姓の刃が、必死の火を降らしていた。

森蘭、森力、森坊の兄弟三人もそこにいた。魚住勝七、小河愛平、金森義入、狩野又九郎、武田喜太郎、柏原兄弟、今川孫二郎なども終始主君のそばから離れずに斬りふせいでいた。

すでに討死をとげて、廊壁を血にそめている屍には、飯河宮松がある、伊藤彦作がある、久々利亀之助がある。中には、敵と組んだまま、重なり合って、相討ちをとげている者も見える。

一方、表御堂番衆の組は、本堂を戦場として、敵を御殿に近づけまいと、さっきから猛烈な血戦を起していたが、御殿へ通じる橋廊下の口を敵勢に取られそうなので、総勢といっても、わずか二十名たらず、一手になって奥へ駈け集まって来た。

そのために、橋廊下へ踏みのぼった明智の武者は、挟撃に遭って、突き立てられ、斬り落され、その下に屍を積んだ。

なおまだそこに無事だった信長の姿を見るなり、表御堂の面々は、われを忘れて叫んだ。

「いまのうちに。おうっ、今の間にこそ。一刻もはやく、ここをお立ち退きあらせられませ」

「ばかなっ」

信長は、弓を捨てた。