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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

07 第七分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页

青空文庫

その妹たちはなお幼い。もとより雛のお客のもてなしは、侍く女たちがすべてするのであったが、秀吉は彼女たちが々として離れないほど歓んで見せた。兄妹はいつのまにか自分たちのよい友達みたいに思って、秀吉の背なかへ絡みついたり、小さい手に杯を持って、

「もう参れぬ。参れぬ」

と、酔うた振りして謝りぬく秀吉の唇へ、むりにそれを押しつけたりして、さながら狆と狆のように戯れ合っていた。

福島市松が次の間まで来て秀吉へ告げた。

「殿。……殿」

「なにか」

「先頃、甲州御陣までお遣わしあそばした使者たち両名。ただいま戻りました」

「お。山口銑蔵、松江伝介のふたりが帰って来たか」

これは人知れず待ちかねていたものらしく、屹と、われに回ったような容子を示し、

「鷺の間へ待たせておけ」

と、すぐ起ちかけた。

秀家の妹や女童たちは、まだ戯れて止まず、その袖を持ったり、肩にからんで、

「いや。いや」

と、かぶりを振り、駄々をこね、秀吉が困った顔をすると、なお離さなかった。

「市松、市松」

「鷺の間へ参るついでに、わしがいいつける。そちは、この女童たちと遊んでいてやれ」

「……は」

「なんという顔をするのか」