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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

07 第七分冊

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页

青空文庫

この組の者にはこの組特有な底意地のわるさと専門の智能と、そして陰性な気性をもっている者ばかりだからである。

誰も嫌がるこの乱波の役をいいつけられて、虎之助はいま、冠山の城へ近づいた。

自分の家来はわずか六人しかつれていない。あと二十名は使いにくい忍びの者だった。ここも山城なので、虎之助が裏山へかかろうとすると、甲賀侍の美濃部十郎が、

「加藤どの」――と耳のそばへ口をよせていう。

「寄手から見て、敵の弱点と思われるほど、敵も用心しています。うっかり裏山へは登れませぬ。まず支度をしますから、すこしお待ちになるがよい」

十郎は、手下を招いて、同じように耳打ちした。

四、五名の忍びが、大手の方へ、風のように消えて行った。

しばらくすると、野良犬の吼えあう声がけんけんと遠い闇に聞えた。

大手の狭間から二、三発、小銃の音がする。――遥かに退いている寄手の陣、杉原隊のあたり、墨を流したような夜気もにわかにうごくかのような気配が感じられた。

「もうよい頃合い。ぼつぼつ登りにかかるとしましょう。敵中の注意はいま悉く大手にそそがれている。どうです、いまの犬の啼き声は、人間とは思われますまい」