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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
07 第七分冊
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 200,903 字 · 400 页
さきほどから町ごとに、各戸へわたってきびしい検察だそうですが、ただ今、ここへもやって参りました」
道三はその門生の浮き腰な容子をたしなめた。
「来てもよいではないか。家探しいたすなら致すで、よくご案内いたしてあげろ」
「……でも」
「何をうろたえているか」
「ここに収容してある三分の一ほどは、織田方のさむらい衆でありますので」
「わしが手をかけた怪我人には指もささせはせぬ。よもまた、それらの傷負いを拉して行こうとは検察の明智衆もいうまい」
「ところが今、それでお玄関で争っているのです。残党狩りの衆は、たとえ瀕死の重傷者であろうと、織田のさむらいは、引っ立てて行くといって肯きません。――拒むなら拒んでみよ、町にかかげてある軍令に照らして、このやしきをも焼き払うぞと、あれ、あのような声で威嚇しておりまする」
「……そうか」
道三はそばにいる紹巴へ、会釈をして、
「ちょっと、中座いたすが、おゆるしを」
と、云いながら起った。
その面を見あげて、紹巴は、
「ま、門生たちに、委せておかれてはどうか。明智の武者は気が立っておるにちがいない。お怪我でもしてはならぬ」
「ご心配に及ばぬ」